赤子を守るため、峠の石に宿った母の魂
夜泣石
石は動かない。石は語らない。それでも夜が更けるたび、この石は泣く。まだ乳も飲まぬ我が子を案じて、峠の闇に泣き声を響かせ続ける。
Overview
山賊に殺された妊婦の霊が石に乗り移り、夜な夜な泣き声をあげた。飴で育てられた子は後に仇を討った。
Encounter
東海道の難所として知られた小夜の中山峠、掛川市佐夜鹿の路傍にあると伝わる。夜、峠を越える旅人の耳に、赤子とも女ともつかぬ泣き声が届いたという。
Lore
安産祈願のため久延寺へ向かっていた身重の女が、峠越えの途中で何者かに斬り殺された。傷口から生まれた子を守ろうと、女の魂が傍らの石に乗り移って泣いたと伝わる。安永2年(1773年)刊『煙霞綺談』や、曲亭馬琴『石言遺響』(文化2年・1805年)など、名を変えながら複数の文献にこの話が記される。
Traits
自らは動かず語らないが、夜になると赤子の無事を案じる母の泣き声を峠道に響かせる。声に気づいた久延寺の僧が赤子を拾い上げ、乳の代わりに水飴を与えて育てたところ、子は無事成長し、のちに母の仇を討ったという。