妬みで狐を憑ける石見の老婆
婆狐(ばばきつね)
ばばきつね / ばば狐 / 婆ぎつね
隣の田が実れば、老婆の目が細くなる。その夜、姿なき狐が畦を渡り、羨まれた家の軒先にそっと忍び込む。
Overview
婆狐は、島根県の石見地方に伝わる憑き物の狐。欲深い老婆に飼われ、その意のままに人へ取り憑くとされる。老婆が隣人の豊かな実りを妬めば、狐は差し向けられて相手を病ませ、田畑や暮らしに難儀をもたらしたという。
Encounter
村に不作や長患い、原因の知れぬ災難が続くとき、その陰には婆狐がいるとされた。作物のよく実った家や暮らし向きの良い家ほど狙われ、憑かれた者は高熱にうなされ、狐じみた素振りを見せたという。
Lore
山陰では狐を家に憑ける「狐持ち」「人狐」の言い伝えが根強く、婆狐もその系譜に連なる。飼い主の老婆が妬みを抱くと、狐は狙った相手へ差し向けられて憑くとされた。狐憑きは古くから土地の忌みごととして語られ、縁組の際にも避けられたという。
Traits
主の命に従う使い狐であり、目に見えぬ姿で人に取り憑いて身体を弱らせ、心を乱す。一度封じ込めても、定められた年季が過ぎればふたたび解き放たれ、同じ家に災いを呼ぶ。狐を持つ家は代々その狐を受け継ぎ、数を増やしながら家運とともに栄えたともいう。