眠れば座敷を埋める肥女
寝肥り(ねぶとり)
寝肥 / ねぶとり
添うてみれば、この上ない美しい妻。ところが夜ごと、床は軋み、蚊帳は張り裂けんばかりに膨らんで、山の唸るようないびきが家を揺らす。惚れた弱みか、それとも情か――主人はそっと、もう一枚だけ布団を敷き足した。
Overview
昼は見目麗しい女が、ひとたび寝入ると身の丈が座敷を埋め尽くすほどに膨れ上がり、車の軋むようないびきをかくという。妖怪というより一種の病、あるいは女の怠惰を戒める教訓話として語り継がれてきた。
Encounter
出会うのは夜、女が寝静まった床の間である。日中はほっそりと美しい姿しか見せないが、蚊帳の内で眠りに落ちるや、みるみる肉が盛り上がり、寝間いっぱいに広がった巨体と轟くいびきに、はじめてその正体が知れる。
Lore
むかし奥州に、たいそう見目麗しい女がいた。ところが眠りこけている間はその身が座敷を埋め尽くすほどに肥え太り、いびきの声は車のようにやかましかった。これこそ世にいう寝肥というものだ、と語り伝えられている。
Traits
起きている間はもとの容色に戻り、肥え太った姿は寝入った時にしか現れない。人に襲いかかることはなく、害といえば安眠を破る大いびきくらいのもの。寝てばかりで肉が付くことへの、どこか笑いを含んだ戒めが込められている。