闇夜を灯して連なる、山の妖猫の行列
山猫
ヤマネコ
峠の闇がぼうと明るむとき、それは月でも松明でもない。数百の目が、こちらを見返しながら列をなして過ぎていくのだ。
Overview
山に群れをなしてすむ。夜に行列をつくって移動する際、その目は松明のように明るく光り輝く。
Encounter
石見の峠道を夜に越えようとすると、ふいに狼が現れて着物の裾をくわえ、先へ進ませない。押し問答するうちに行く手の闇が松明を掲げたように明るみ、無数の光る目を連ねた行列が音もなく通り過ぎていく。それが山猫の群れだと気づいたときには身がすくむ。狼に引き止められなければ、その大群に呑み込まれていたという。
Lore
山猫が人を化かし憑くという俗信は隠岐に色濃く、雪の降った朝には二股に割れた足跡を残し、化かされた者は一晩中山中を駆け回らされたという。石見では、行列をなす山猫の群れから旅人を守った狼を、山の神の使いと見た。こうした話は山陰の民俗資料に採録されている。
Traits
夜になると群れをなし、松明のように爛々と目を光らせて列をつくり、山道を音もなく渡っていく。単独では人を化かして道に迷わせ、幻を見せて一晩中山を駆け回らせる。雪の上に残す足跡はつま先が二股に割れており、人里の飼い猫とは似て非なるものと見分けられた。