川辺に火を転がす姿なき天狗

川天狗

かわてんぐ / 川天狗火

打った覚えのない網の音が、闇の川面を渡っていく。対岸で松明が揺れ、大勢がざわめく——のに、そこには誰もいない。獲れた魚を、そっと石の上へ。あとは振り返らずに帰るがいい。

川天狗 figure art

Danger and Rarity

C
戦闘力

驚かせ、転ばせる程度。命までは取らない。

C
敵対性

脅かし惑わせはするが、深追いはしない。

B
稀少性

各地に類話はあるが、遭うには条件がいる。

Overview

川天狗は、多摩川や道志川など関東・甲信の川辺に伝わる天狗の一種。姿を見せないまま、夜の川で漁をする人のもとへ大きな火の玉を転がしてくるとされる。投網を打つ音を真似、誰もいない対岸に人声や松明を灯すなど、音と光で人を惑わす川の怪である。

Encounter

遭うのは、日の暮れた川べりで漁をしているとき。闇を大きな火の玉が突然転がり寄せ、あるいは打った覚えのない投網の音が水面に響く。対岸には松明が揺れ大勢がざわめくのに、そこには誰の姿もない。河原の石を洗い清め、獲れた魚を供えると、気配はすっと失せる。

Lore

神奈川県津久井郡内郷村では、川天狗は姿を現さず、夜漁の者へ火の玉を転がす怪異として語られた。奥多摩や秩父、道志川などにも同様の話が伝わり、関東から中部の怪火「天狗火」を川天狗の仕業とする土地もある。水辺の怪として、漁師の間で語り継がれてきた。

Traits

本体を見せることはなく、火・音・声の気配としてのみ立ち現れる。人の夜漁を妨げて驚かすが、人を直接害したという話は乏しい。供え物の魚で退くことから、川の恵みを独り占めされるのを嫌う、川の主のような性質とも解される。

川天狗 cover image