美貌の皇后が、無常を説くために遺した亡骸
帷子辻
かつて誰もが振り返った美しさが、いま骨と土へ還ってゆく。それを見よ、と皇后は言い遺した。
Overview
平安初期の絶世の美女・檀林皇后の亡骸が捨て置かれたと伝わる嵯峨野の辻。朽ちてゆくさまを人目に晒したのち、無惨な姿となった皇后の亡霊が現れたという。
Encounter
京都・嵯峨野の外れ、今の帷子ノ辻駅周辺にあたる辻。かつては人があまり近づかぬ野晒しの魔所で、行き倒れや無縁仏が捨てられる土地だった。荒れ野に横たわる女の亡骸と、その傍らに立つやつれ果てた皇后の姿が、そこに見えたと語り継がれてきた。
Lore
嵯峨天皇の皇后・橘嘉智子は世に稀な美貌で知られ、嵯峨野に禅院・檀林寺を創建したことから檀林皇后とよばれた。死に臨み「亡骸は埋めず辻に捨て、朽ちてゆくさまを恋に迷う者に示し、世の無常を悟らせよ」と遺言したという。亡骸は野犬や鳥に食われ、蟻や地虫にしゃぶり尽くされ、日光と風雨に晒されて消えた。
Traits
現れるのは、生前の美しさとはかけ離れた、腐り崩れた皇后の亡霊の姿だという。訪れた者に己の変わり果てた身を見せ、栄華も美貌もはかなく朽ちるものだと、無言のうちに突きつける。この一部始終は九相図として描き継がれ、辻の一帯はやがて無縁仏の集まる魔所となり、人の寄りつかぬ土地となった。