虚無僧の妄執が宿る、ぼろ布団の付喪神
暮露暮露団
誰も寝ていない布団が、夜ふけにそっと膨らむ。捨てられてもなお、この綿の中には、まだ眠りたい誰かがいる。
Overview
破れてぼろぼろになった古い布団に、捨てきれぬ妄執が宿ったとされる付喪神。鳥山石燕が『百器徒然袋』に描いた。『徒然草』に登場する遊行者「ぼろぼろ」と、ぼろぼろの布団との言葉遊びから生まれた、石燕の創作妖怪と考えられている。
Encounter
長年使い込まれ、打ち捨てられてなお処分されず残された布団に現れるという。夜、誰も寝ていないはずの寝間で夜具がむくりと起き上がり、はみ出た綿の隙間から、悟りきれぬ者の顔がのぞくとされる。
Lore
石燕は名を『徒然草』第百十五段「宿河原といふ所にて、ぼろぼろ多く集まりて」に拠った。ここでの「ぼろぼろ」は暮露・梵論字とも記される普化宗の遊行僧の類を指す。その語と破れた布団を掛け、悟りに至れぬ妄念の宿るものとして描いたもので、民間伝承としては伝わらない。
Traits
夜具でありながら、宿った妄執ゆえにひとりでに蠢く。人を暖めるべき本分を失い、寒々とした綿の塊のまま、成仏できぬ想いを引きずる。人を襲うとは語られず、ただ古び朽ちてなお消えぬ執着そのものとして在り続ける。