眠らぬ木魚と達磨が合わさった、不眠の付喪神
木魚達磨
打てば澄んだ音を返した木魚も、打ち捨てられて幾年月。夜半ふと目を開ければ、座布団の上で、髭面の魚がこちらをじっと見ている。
Overview
読経のときに打ち鳴らす仏具・木魚が、長い年月を経て変じた付喪神。まるい座布団の上に鎮座し、達磨大師さながらの髭面をたたえる。もとは寺の床に打ち捨てられていた木魚が、魂を得て動き出したものと語られる。
Encounter
古寺の本堂や、打ち捨てられた仏具の間にひそむとされる。夜、眠れぬまま床に就く者の枕元に、いつのまにか髭面の木魚が座っている——そんな不眠の夜にこそ現れると、後の世の人は想い描いた。
Lore
鳥山石燕は『百器徒然袋』にこれを描き、同じ仏具から生じた払子守と同類のものかと記した。木魚は、魚が昼も夜も目を閉じぬことにちなみ、僧に不眠不休の修行を諭す道具である。眠らずに九年の面壁を貫いた達磨の伝説と重ね、石燕は「眠らぬもの」の化身としてこの姿を思い描いたと考えられる。
Traits
木でできた魚の体に髭面をのせ、円座に据わって身じろぎもしない。魚ゆえに目を閉じることなく、達磨のごとく眠ることを知らぬ。憑かれた者は同じく夜ごと眠りを奪われるのではないかと、後の世に語られるようになった。害をなす力は乏しく、ただ静かに眠らぬ気配だけを漂わせる。