隙間から忍び入り、寝込みを押し潰す板
板鬼
太刀さえ手にしていれば、それは襲っては来ない。だが人はいつまでも刀を握ってはいられない。まどろみ、指がゆるむ、その一瞬を板は待っている。軒の上で、じっと、身をひそめて。
Overview
『今昔物語集』の説話に語られる、板の姿をした怪異。宿直の侍たちが寝入ったところへ、建物の軒から一枚の板が長く伸びて飛来し、格子の隙間から入り込んで五人を平たく押し潰して殺したと伝わる。当時「鬼」は妖怪一般を指す語で、板鬼とはおおむね板の妖怪の意である。
Encounter
現れるのは、宿直や旅寝で人が刀を枕元に置き、深く寝入った夏の夜更け。屋根や軒の板がむくりと動き出し、七、八尺も伸びて宙を飛ぶ。刀を構えた者のそばは巧みに避け、無防備に眠る者だけを狙って、格子の細い隙間から音もなく忍び寄る。
Lore
出典は平安末期の説話集で、宿直の若侍二人が軒から突き出た板の飛ぶのを見たと記される。板は武装した者を避け、格子の隙間から寝ていた五人を押し潰して殺し、そのまま掻き消えた。武器を手放した隙をつく怪として、「刀を離すな」という宿直の心得とともに語り継がれてきた。
Traits
平たい一枚の板でありながら意のままに伸び縮みし、宙を泳ぐように飛ぶ。刃を向ける相手は決して襲わず、眠って無防備になった者だけを選ぶ狡猾さを持つ。狭い格子の隙間もすり抜け、覆いかぶさって人を押し潰すと、痕跡も残さずに消え去る。