古柳に宿り、女にも老婆にも化けて人を招く木の精
柳婆
風のない夜、街道の古柳がさらりと揺れた。枝の下に、さっきまでいなかった老婆が立っている。おいで、おいで、と垂れた枝が手招きする。柳の下で振り返ってはいけない、と土地の者は声をひそめて言い伝える。
Overview
柳の古木に宿るとされる樹木の精。柳の枝が垂れるさまや、柳を老い・病・死と結びつける連想から、その霊は皺深い老婆の姿をとると語られた。江戸後期の『絵本百物語』に柳婆の名で描かれ、柳の霊が人を招き惑わすものとして語り伝えられてきた。
Encounter
遭うのは、人里や街道沿いに立つ年経た柳の下。とりわけ夜、風もないのに枝がさらりと揺れるような古柳が危うい。ときに若い女、ときに腰の曲がった老婆となって物陰から現れ、通りがかった人を呼び止めては、招くように話しかけてくる。
Lore
古書『奇談類抄』は、常陸国鹿島に樹齢千年を超える柳があり、あるときは美女、あるときは老婆に化けて道行く人に声をかけたと記す。垂れた枝を亡者の手に見立て、柳を幽霊の出る木として畏れる感覚は各地にあり、柳と老い・病・死を結ぶ連想が、その精を老婆の姿として語らせたと考えられている。
Traits
老いた柳を依り代とし、若い女にも年老いた姿にも自在に化ける。垂れた枝を手のように差し招いて人を呼び止め、言葉を交わすうちに相手を惑わせる。祟りとして病や老いを人に負わせるとも言われ、柳という木そのものへの畏れを体現した存在である。