詫びの魚を岩に置く河童の岩
河童石
かっぱいし
牛を引く手をつかめば、腕は面白いほど抜ける。だが夜、詫びに来るものの顔を、見た者はいない。
Overview
河童石は、大分県野津町(現・臼杵市)の川の中にある大岩で、河童にまつわる言い伝えを負った岩である。牛馬を引こうとして腕を抜かれた河童が、詫びのしるしに魚を供えたと語られ、水難と祟り、そして河童とキュウリの結び付きが、この一つの岩を目印として伝えられてきた。
Encounter
岩のほとりで作男が牛や馬を洗っていると、水の中からぬっと手が伸び、牛馬の尾を引く。何事かと力任せにその手をつかめば、腕はスポッと抜けてしまう。子どもが岩の上で遊べば足を滑らせ、水を飲んで病みつく——川辺のこの大岩は、河童と人とが触れ合う境の場であった。
Lore
腕を抜かれた河童は、その夜、作男の夢に現れて昼間の非礼を詫び、腕を返してほしいと乞う。礼に川魚を岩へ置くと約束し、承知して翌朝訪ねると、岩の上には魚がたくさん並んでいたという。岩で水にはまって病んだ子も、キュウリを供えて祭れば癒えたと、この地に語り継がれている。
Traits
抜けた腕はやがて生え直るとされ、痛痒も見せずに夢を介して人と言葉を交わし、詫びの証として魚をそろえる律義さを持つ。好物のキュウリを供えられれば水難の祟りを解くともいい、水へ引き込む荒々しさと礼を欠かさぬ義理堅さとを併せ持つのが、この石にすむ河童である。