人に憑いて大食らいさせる憑物
狸憑き
膳を三度平らげても、痩せていく。腹の中の客は、いくら食っても満たされない――満たされているのは、こちらではないのだから。
Overview
人に取り憑き大食いさせる。住処を追われた報復などで、祈祷で落とす。
Encounter
四国や佐渡、東北などで、急に人が変わったように大食いを始め、赤飯や小豆飯をむさぼるようになったとき、狸に憑かれたと疑われる。腹ばかりが膨れて体は痩せ細り、ふさぎ込んだかと思えば多弁になり、暴れたり四つ足で這ったりする。山で狸の住処を荒らした者や、祟りを買った家の者が狙われやすいとされた。
Lore
江戸時代の随筆『視聴草』には、狸が死人に憑いたとする記録が残る。阿波では嘉永年間、阿波郡林村の女髪結が狸に憑かれて吉凶を言い当て、みずから狸落としまで行ったと伝わる。憑いた狸を落とすには加持祈祷が頼みで、護摩を焚き、唐辛子を燻し、太鼓を打つなど、その作法は土地ごとに異なった。
Traits
憑いた狸は人の口を借りて食を求め、赤飯や小豆飯をことのほか好む。食べた物の精は狸に吸い取られてしまうため、当人はいくら詰め込んでも腹だけ膨れて痩せ衰えていく。気分は塞いだかと思えば急に饒舌になり、わけもなく暴れ、四つ足で這うなど常とは違う振る舞いを見せる。落とされぬ限り、宿主から離れようとしない。