悪夢を喰らう、吉兆の霊獣
獏(ばく)
ばく / 貘
見たくもない夢を、そっと差し出せばよい。象の鼻を持つ獣が、闇に紛れて残さず平らげ、朝には吉夢だけを残していく。
Overview
人の悪夢を食べる霊獣。悪夢を見た時に「獏にあげます」と唱えると難を逃れる。疫病除けの力も持つ。
Encounter
枕元と、まどろみの淵に現れる。恐ろしい夢に魘されて目覚めた朝、「この夢を獏にあげます」と三度唱えれば、獏がそれを残らず食べ去り、凶事に転じるのを防いでくれるという。正月には良い初夢を招くため、姿を描いた札を枕の下へ忍ばせて招かれた。
Lore
中国由来の霊獣で、唐の白居易『貘屏賛』序には鼻は象・目は犀・尾は牛・脚は虎に似た姿と記される。中国では毛皮を寝具にすると邪気を避けるとされ、その辟邪の伝承が日本へ渡る過程で『悪夢を食べる』と解された。室町末期には宝船の絵の帆に獏の一字を書き、江戸期には獏を刻んだ箱枕が作られた。
Traits
象の鼻、犀の目、牛の尾、虎の脚を寄せ集めたような合成獣で、熊に似るとも伝わる。魘される者の見た夢を食らって凶兆を祓い、あわせて疫病や邪気をも退ける辟邪の力を持つ。害獣ではなく眠りの守り手として枕辺に招かれ、安らかな目覚めと息災をもたらす吉祥の獣として親しまれた。