恩を返す越後の山獣

異獣

いじゅう

焼飯ひとつで、山が味方になる。差し出した掌を、その獣は決して噛まなかった。

異獣 figure art

Danger and Rarity

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

Overview

異獣は、越後の山中に現れたと『北越雪譜』が伝える獣。猿に似るが猿ではなく、髪を長く垂らし、背丈は人より大きい。人から食べ物をもらうと恩を返すように重い荷を運び、害をなさず山へ帰るという、人と心を通わせる山の怪である。

Encounter

雪深い越後の山道で、笹をかき分けて不意に姿を見せる。旅人が腰を下ろして焼飯を頬張っていると、匂いに惹かれるように近づいた。峠越えの荷が重い者や、機を織る家の軒先など、人が難儀している場に寄ってくる。恐れず食べ物を分けた者の前にだけ、その姿は留まった。

Lore

鈴木牧之の随筆『北越雪譜』二編に、堀之内から十日町へ縮を届ける竹助の見聞として記される。食物を分けられた獣が重荷を担いで険しい山道を運び、里が近づくと荷を置いて走り去った。同書には機織りの娘を助けた話も併せて載り、執筆時の四、五十年ほど前の出来事と伝える。

Traits

人の背丈を超える大柄でありながら、俵ほどの荷を片手のように担ぎ、断崖の山道を人の何倍もの速さで駆ける。言葉は解さぬはずが人の困りごとを察し、受けた恩には黙って報いる。腹が満ちれば用は済んだとばかりに、礼も求めず山の奥へ消えていく。

異獣 cover image