白粉の神に仕える、雪よりも白い顔の老婆
白粉婆
顔を白く塗るのは、いったい誰に見せるためか。師走の月夜、鏡を引きずる音が近づいても、振り返ってはいけない——そこに立つのは、白粉の神に仕えて幾年、化粧を落とすことを忘れてしまった老婆かもしれないのだから。
Overview
顔に白粉を塗ったように真っ白な老婆の妖怪。紅白粉の神・脂粉仙娘に仕える侍女とされ、鳥山石燕の妖怪画にも描かれた。奈良県十津川では、鏡を引きずるようにして現れる山の怪として語られる。
Encounter
師走、月の冴える夜に現れる。雪をかぶった原野や、人けの絶えた山道に、老婆の白い顔だけがぼうっと浮かび上がる。奈良の十津川のあたりでは、チリンチリン、と鏡を引きずるような音が闇の奥から近づいてきて、それが白粉婆さんの訪れる知らせだと恐れられた。
Lore
白粉は化粧の象徴であり、それをつかさどる神を脂粉仙娘と呼んだ。白粉婆はこの神に仕える侍女とされ、師走の月夜に立つ女の姿の恐ろしさが古くから言い伝えられてきた。人里を離れた雪原や山中で、その白すぎる顔と行き合うことは、常ならぬものとの出会いとして忌み恐れられたのである。
Traits
腰は大きく曲がり、頭には破れた大笠をのせ、右手に杖、左手に酒徳利を提げた出で立ちで描かれる。人に掴みかかって害するというより、白すぎる顔と老いさらばえた姿そのものが人を怯えさせる妖怪で、化粧の神に仕える者らしく、白と女にまつわる不気味さを一身にまとっている。