森かげから砂を浴びせる姿なき老女
砂かけ婆
参道の松の梢が、ざわりと鳴る。見上げても、誰もいない。次の瞬間、目も口も砂まみれ——婆の笑い声だけが、どこにも聞こえない。
Overview
通りかかった人に頭上から砂をバラバラと振りかけて驚かす妖怪。婆の名を負うが姿を見た者はなく、正体は定かでない。奈良県を中心に兵庫・滋賀にも伝わり、砂を撒くのは年経た狸の仕業とする土地もある。
Encounter
出遭うのは日暮れどきの寂しい坂道や、木立の茂った小暗い道である。前後に人影のないところで、ふいに頭の上から砂がバラバラと降りかかる。とっさに見上げても枝に人の姿はなく、土地によっては砂そのものは降らず、ただ砂を撒く音だけが聞こえるともいう。
Lore
沢田四郎作『大和昔譚』は、人寂しい森のかげや神社のかげを通ると砂をバラバラ振りかけて驚かす『スナカケババ』を記し、その姿を見た者はないとする。奈良では奈良市や北葛城郡に伝わり、兵庫の西宮・尼崎あたりでは砂は実際には降らず音だけがするとも語られる。
Traits
人通りの絶えた物陰にひそみ、通りかかる者を狙って砂を浴びせては驚かす。害を加えるより人を怖がらせるのを好むいたずら者で、決して姿を現さない。土地によっては年経た狸が正体ともいい、砂を撒く音だけを残して立ち去るとも伝わる。