人を縊死へ誘う憑き物
縊鬼
代わりが要る。ひとり死ねば、ひとり浮かばれる。——さあ、次はおまえの番だ。
Overview
人を自殺(首くくり)に誘う憑き物。川で死んだ者の霊が引きずり込もうとする。
Encounter
首吊りの名所や、かつて縊死のあった川端・門のあたりを通りかかると、ふいに理由のない死への衝動が胸をよぎる。気づけば足は梁の下や水辺へ向かい、正気に戻ったときには縄に手をかけている——そんな形で、縊鬼は音もなく人に取り憑くとされる。
Lore
もとは中国の思想に基づく。冥界の人口は定まっており、縊死者が転生するには身代わりの死者が要る——この「鬼求代」の理から、縊死した霊は生者に憑いて同じ死へ引き込むとされた。日本では幕末の旗本文士・鈴木桃野の随筆『反古のうらがき』が、江戸の麹町や喰違御門での憑依の顛末を記している。
Traits
それ自体は牙も爪も持たず、ただ人の心に「首を吊りたい」という抗いがたい衝動を吹き込む。狙われた者は理由を語れぬまま縄を求め、水辺では川へ身を投げたくなるという。一人が死ねば、次の身代わりを求めてまた別の者へと移ってゆく。