海底から浮かぶ臼を負うた老婆
臼負い婆
凪いだ夏の海が、不意に翳る。臼を負うた白髪が、水底からこちらを見上げていた。
Overview
海面に現れる白髪の老婆。臼を背負った姿で泳ぎ回り、二、三年に一度出現するとされる。
Encounter
佐渡島の南、小木町宿根木の『あかえの京』と呼ばれる磯に現れる。江戸のころ、この地に住む侍が夏の日に仲間を連れて釣りに出ると、まだ午後だというのに辺りが暮れたように暗くなり、海底から白髪の老婆がぬっと浮かび上がったという。
Lore
佐渡の怪談を集めた『佐渡怪談藻汐草』に記録が残る。両手を背に回して臼のようなものを負い、濡れた白髪を振り乱し、口には牙をのぞかせていたという。現れた化け物は釣り人たちをじっと見つめ、やがて再び水底へ沈んでいった。臼負い婆という名が確かめられるのは、この宿根木の一件のみである。
Traits
二、三年、時に四、五年に一度という間遠さで、決まって同じ磯にだけ姿を見せる。人を襲ったという話はなく、海底から浮かび上がっては見物人を見据え、音もなく沈み去るのみである。磯女や濡女に連なる、海辺の女の妖の一つと見なされている。