恨む相手に蛇を憑かせる家筋
蛇蠱
浜に流れ着いた、ひと棹の長持。分ければよかった欲を、蛇はちゃんと覚えている。恨みをひとつ抱くたび、鱗のひとつが目を覚まし、憎いあの人の臓腑へと、音もなく這い込んでいく。
Overview
香川県・小豆島に伝わる憑きもの筋。この家の者が誰かを恨むと、相手に蛇の霊が憑いて苦しめ、ついには体内へ入り込んで死に至らせるとされる。海辺へ漂着した長持から出た蛇に由来するという。
Encounter
蛇蠱の家筋の者に恨みを買った相手のもとへ、災いは音もなく訪れる。憑かれた者は原因の知れぬ病に臥し、腹の底で蛇がのたうつような苦しみに責め立てられる。医薬も祈祷も効き目がなく、やがて蛇が臓腑に食い入って命を落とすと恐れられた。
Lore
村の海辺へ一棹の長持が漂着し、その所有をめぐって村人が争った。ようやく皆で公平に分けようと蓋を開けると、中から無数の蛇が這い出し、権利を主張した者の家々へめぐり入った。その家筋が蛇蠱の元祖になったと伝わる。江戸後期の随筆『茅窓漫録』は四国の蛇蠱を「俗に土瓶という」と記している。
Traits
特定の家に憑いて代々受け継がれ、当主一族の心のままに働くとされる。深く恨めば意のままに蛇を差し向けられる反面、その力ゆえに家そのものが忌まれ、婚姻を結ぶのをためらわれる筋として遠ざけられた。持ち主の血筋が絶えても蛇だけは残り、次の家へ移り憑くともいう。