夕暮れの辻で袂を引く、姿なき悪戯者
袖引き小僧
袖引小僧 / そでひきこぞう
引かれて、振り向く。誰もいない。歩き出せば――また、袂がクイと。
Overview
夕暮れどきに、人の袖を後ろからそっと引く姿なき妖怪。振り返っても誰もおらず、また歩き出せばふたたび引かれる。危害を加えることはなく、子供の悪戯めいた罪のない怪異として語り継がれてきた。
Encounter
日が落ちて薄暗くなった帰り道、ひとりで先を急ぐ者の袂が、後ろから軽くクイと引かれる。立ち止まって振り向いても人影はなく、気を取り直して歩を進めれば、また同じように引かれるという。
Lore
埼玉県川島町や川越地方に伝わり、『川越地方郷土研究』『綜合日本民俗語彙』などの民俗資料に記録が残る。助けを求める落武者の霊とも、盗賊と誤られて親に殺された子の霊が化したものともいい、袖にまつわる路傍の神への信仰と結びつけて語られることもある。
Traits
決して姿を見せず、袂を引く感触だけで人を惑わす。相手を驚かせ、振り向かせて楽しむばかりで、命を奪うような害意はない。水木しげるは黒い体に子豚めいた顔で描いたが、本来その容姿を見た者はいないとされる。