行楽の余韻がともす無人の火
野宿火(のじゅくび)
宴はとうに果てた。それでも火は燃え、笑い声は続く——誰も、まだ帰りたくないのだ。
Overview
花見や紅葉狩りの行われた後の野に燃え上がるという怪火。狐火とも叢原火とも異なり、火のまわりに姿は見えず、大勢が騒ぎ歌う声だけが聞こえてくるものとされる。
Encounter
人々が引き上げた宴の跡、夜の野にふいに火が燃え上がる。近づいても人影はなく、賑やかな喧騒や歌声ばかりが、火を囲むように響いてくるという。
Lore
竹原春泉の画に「狐火にもあらず叢原火にてもなく」と添えられ、行楽のあとの火のそばで「人の多く騒ぎ歌唱ふ声のみする」ものを野宿の火と呼ぶ、と記されている。
Traits
決まった姿を持たず、賑わいの残り香に応じて燃える。火そのものより、そこに満ちる人声こそが本体で、宴の余韻や名残惜しさが野に凝って怪火となったものと考えられている。