金槌を振り上げる絵巻の怪
金槌坊
かなづちぼう
振り上げた槌は、まだ下りない。……次の一歩を、こいつは千年も測り続けている。
Overview
熊本・松井文庫の『百鬼夜行絵巻』に描かれた、鳥のような顔で金槌を振り上げる妖怪。説明文が伴わず正体は不明で、槌にまつわる付喪神の類とも、用心深さの擬人化とも解される。
Encounter
姿が確かめられるのは絵巻のなかだけである。行列をなす百鬼にまじり、金槌を大きく振りかぶった小柄な影として現れる。何を打とうとしているのかは描かれず、詞書もないため、見る者はその意図をはかりかねる。
Lore
松井文庫本は天保三年(1832年)に織田杲斎が描き、肥後八代城主・松井家に伝来した。同種の妖怪は国立歴史民俗博物館の『化物絵巻』などにも見え、そこでは「大地打」と名づけられるが、いずれも説明を欠く。
Traits
常に金槌を頭上へ構えるが、打ち下ろす場面は伝わらない。妖怪研究では、石橋を叩いて渡るような用心深さの化身、あるいは臆病者に付き従う用心棒の類とも読み解かれ、鳥山石燕の描く鎗毛長に連なる意匠とされる。