家を守り悪霊を祓う稲荷の神霊

おまん稲荷

妻の唇が動き、聞き慣れぬ声が言う。「我はこの家を守る、おまん稲荷である」と。鬼はまだ庭先に立っている。だが十七日、法華経を絶やすな――神は去り際に、筆をとって二文字を遺した。妙法。それは家に残された、たった一つの守り札。

おまん稲荷の立ち絵

危険度・希少度

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

S
稀少性

ただ一体、一度きりの怪異として語られる。

概要

おまん稲荷は、江戸の随筆『古今雑談思出草紙』に記された、小石川に祀られた霊験あらたかな稲荷。享保のころ、石野家の屋敷の鎮守として、妻に憑いた家代々の悪霊から一家を守ったと伝わる。妖怪というより、人を害する鬼形の霊を退けた善なる神霊として語られる存在である。

出現

遭うのは怪異の側からで、こちらが探して出会えるものではない。小石川・石野家では、妻が突然何者かに憑依され、昼夜を問わず鬼のような姿の者がまとわりつくようになった。その妻の口を借りて「我はおまん稲荷の神霊」と名乗り、家に巣くう悪霊の正体と、これを祓う手立てを告げたという。

伝承

おまん稲荷は江戸時代の随筆『古今雑談思出草紙』の「中橋稲荷霊験の事」に見える。Wikipediaは事件を享保11年(1726年)4月とし、怪異・妖怪伝承データベースは享保12年4月とするなど記録に一年の揺れがある。水木しげる『妖怪大全』も年を挙げず同話を収める。屋敷の鎮守が家人を守った霊験譚として伝わる。

特徴

屋敷の鎮守として石野家に宿り、家に代々伝わる鬼形の悪霊を見張る。悪霊が妻に取り憑くと、妻の口を借りて事の次第を告げ、法華経を十七日間読誦すれば功徳で悪霊が退散すると教えた。みずから手を下すのではなく、経の力を借りて災いを祓う。約束の五月十五日には王子稲荷への道すがら再び訪れ、家の宝にと「妙法」の二文字を残したという。

おまん稲荷のカバー画像