草むらから躍り出る、毛の生えた人面の蛇
くら虫
人面蛇 / 長虫
夏草を分けて歩けば、足元でざわりと草が波打つ。振り向いた先、蛇のとぐろから覗くのは人の顔――髪を垂らし、歯を剝いて、こちらを見ている。虫と呼ぶには、あまりに人に似すぎている。
概要
くら虫は、江戸時代から伝えられる人面蛇の一種とされる妖怪。人のような顔を持ち、蛇のような体には毛が生え、よく見ると頭髪まで有している。件や平家蟹と同じく、人間以外の生き物に人の顔がついた妖怪の仲間に数えられ、人面ナニナニと噂された怪しい生き物の一つとして語られる。
出現
草深く薄暗い場所にひそんでいる。傍らを通りかかる人があると、草むらの中から不意に躍り出て、その人を脅かし襲うという。人間のような顔で歯を剝き出し、頭髪までを有した長い体をくねらせて追ってくる。人けの少ない夏草の茂みほど、その気配が濃くなるとされる。
伝承
くら虫は、人の顔をした蛇(人面蛇)として江戸時代から語られたとされる妖怪だが、怪異・妖怪伝承データベース等に独立した項目が確認できず、水木しげる系の妖怪画集に一図として紹介されるにとどまる。蛇を「長虫」と呼んだ古い言い回しから「くら虫」と名づけられた可能性が指摘されている。
特徴
一見ただの蛇のようだが、体に毛が生え、頭髪まで有している点が異質とされる。ふだんは草深い薄暗がりに身をひそめ、人が近づくと草の間から躍り出て、歯を剝き出しながら脅かし襲いかかる。件や平家蟹のように、生き物に人の顔がついた人面の怪の一種として噂された。