迷わせて、養う八丈島の山姥
てっち
テッジ / テンジ / テンジメ
竹藪の奥に立つその影は、道を奪うのか、それとも迷い子を抱き留めているのか。振り向いた乳房の長い老女の顔だけが、静かにこちらを見ている。
概要
てっちは東京都八丈島に伝わる山姥系の妖怪で、テッジ、テンジ、テンジメとも呼ばれる。人を一晩中山道に迷わせたり姿を消させたりする一方、親しくなると馬草を刈って戸口まで運んでくれるなど、害意と親愛が同居する両義的な存在として語られる。
出現
八丈島の山中、竹藪の茂る道で行き会うとされる。夜に山道へ入った者が一晩中あらぬ場所を歩かされたり、そのまま行方が分からなくなったりする一方、迷い込んだ子供が二十日ほど後に山中で無事に見つかることもあり、その間てっちが養っていたのだと伝えられる。
伝承
八丈島の伝承として語られる山姥系の妖怪で、テッジ・テンジ・テンジメの呼称でも伝わる。同島でいう山姥は一本足で竹の杖を使い山を歩くともいう。類話はWikipedia「山姥」の項目にも各地の山姥の一つとして記され、体に瘡が出て乳を両肩にたすき掛けにするという特徴、子供を数日養う話が独立に確認できる。別名のテンジは、山小屋番にいたずらをしつつ飢饉の際には山芋や木の実を恵んだという八丈島の民話の主人公としても伝わる。
特徴
体中に瘡ができ、長く垂れた乳房を両肩にかけて歩くと伝えられる。人を惑わせ姿を消させる力を持つが、根からの悪意ではなく、親しくなれば馬草を運ぶなど人に利することもある。行方不明になった子供を山中で二十日ほど養い、無事に生かして返したとも言われ、山の神に近い性質を持つと考えられている。