稲荷おろしに紛れ込む位なき狐憑き
アゼハシリ
畦走り / あぜはしり
招いたのは神であった。呼んだのは死者であった。だが畦の向こうから、位なき狐がついてくる。代さんの手つきが、ふと常でなくなる。誰を降ろしたつもりが、何に憑かれたのか。
概要
アゼハシリは、稲荷おろしや口寄せの行のさなか、目的とは無関係に現れる霊界で位のない狐が人に乗り移る現象を、佐賀県で呼んだ名。憑かれた者は奇妙な格好をし、奇矯な振る舞いをするようになるという。狐狸の霊が人に憑くとされた、九州の憑き物俗信のひとつである。
出現
稲荷明神の霊を降ろす稲荷おろしや、死霊を呼び出す口寄せの席で現れる。神や死者を招こうと巫者が行を進めるうち、招いた覚えのない位なき狐がまぎれ込み、代さん(神の乗り移る口寄せの者)や参席した者へふいに乗り移る。ひとたび憑けば、その者は見慣れぬ格好をし、常ならぬ挙動を見せはじめる。
伝承
佐賀県で語られた憑き物の呼称で、水木しげる『妖怪大全』に採録される。名の由来は明らかでなく、水木は「田の畦を走る動物が憑く」意かと推測を記すにとどまる。狐狸の霊が人に憑くとする狐憑きの俗信、および稲荷おろし・口寄せという憑依の行を背景に持つ、佐賀の民俗である。
特徴
位なき狐の霊で、稲荷おろしや口寄せの場に、招かれぬまま紛れ込んで人へ憑く。憑かれた者は奇妙な格好をとり、奇矯な振る舞いを繰り返すようになる。人を害し殺めるほどの力は伝えられず、狐狸の霊が意図せず現れて人に取り憑くという、掴みどころのない性質を持つ。