古い生け垣を揺する見えない怪
クネユスリ
クネ揺すり / クネゆすり
誰もいないのに、古い生け垣がざわざわと大きく揺れる。風でもない、獣でもない。近くではきっと、小豆をとぐさらさらという音がしている。長い年月、蛇や虫や鳥を抱え込んできた垣根そのものが、そろそろ何かになりかけているのかもしれない。
概要
クネユスリは、秋田県仙北市角館に伝わる妖怪。クネは方言で生け垣を指し、姿は見えないまま古い生け垣をひどく揺さぶる。小豆をとぐ音を聞かせる小豆とぎのすぐ傍らにいるとも語られる。蛇やモグラ、鳥や蜂のひそむ古い生け垣そのものが妖怪と化したものだろうと解される。
出現
現れるのは、田舎の古びた生け垣。誰もいるはずのない垣根が、ときにひどく揺れ動く。蔦や雑草に覆われ、蛇やモグラ、モズの巣や蜂が潜むような古い生け垣ほど、その気配は濃い。姿は見えず、何が揺らしているのかも分からない。ただ不思議な感じだけが、古い垣根から立ちのぼる。
伝承
武藤鐵城「音と民俗(秋田県仙北郡角館附近)」(『旅と伝説』1938年)に、生け垣をひどく揺する化物「クネ揺すり」として記録され、小豆とぎのすぐ傍らにいるとされる。クネは竹などを編んだ垣根・生け垣を指す方言で、狂言『瓜盗人』にも用例のある古い言葉である。
特徴
姿をいっさい見せず、古い生け垣に取りついてこれを激しく揺さぶる。人や家畜を害することはなく、ただ揺らすだけの静かな妖怪。蛇・モグラ・鳥・蜂・蜘蛛の巣など多くの命を宿した古い垣根に生じやすく、同じ音の怪である小豆とぎのすぐそばに寄り添っているとも伝えられる。