洞爺湖に潜む有翼の蛇神

ホヤウカムイ

オヤウカムイ / ホヤウ / サキソマエップ / ラプシヌプルクル

湖面が黒く波立ち、鼻をつく悪臭が立ちのぼる。近づいた者の肌は爛れ、毛は根元から抜け落ちる。だが村に疫病が忍び寄る夜、同じ悪臭が病魔を吹き払うこともあるという。洞爺湖の底に潜むそれは、恐れるべき魔か、それとも祈るべき神か。

ホヤウカムイの立ち絵

危険度・希少度

A
戦闘力

人の命を奪う明確な攻撃手段を持つ。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

概要

ホヤウカムイは、アイヌの人々が蛇神と呼び伝える湖沼の主。洞爺湖の主も同じくホヤウカムイだといい、頭と尾が細く胴の太い、翼のある姿で、全身から悪臭を放つ。人に襲いかかる恐ろしい魔神とされる一方、巫女に憑いて病の原因を告げるなど、人を助ける守り神の顔も併せ持つ。

出現

洞爺湖をはじめ、アイヌの人々が「カムイトー(魔神の沼)」と呼んで近寄ることを避けた湖沼が、その住処とされる。全身から漂う強烈な悪臭で、住む湖はすぐそれと知れるという。悪臭の通った跡に踏み入ると、皮膚が腫れたり体毛が抜け落ちたりし、近づきすぎれば皮膚が焼け爛れて死に至ることすらあると伝えられ、人々はそうした沼への立ち入りを固く戒めていた。

伝承

アイヌの伝承に語られる蛇神で、洞爺湖をはじめ北海道各地の湖沼の主とされる。吉田巌「アイヌの妖怪説話」(『人類学雑誌』第29巻、1914年)、更科源蔵『アイヌの神話 カメラ紀行』(淡交新社、1967年)、更科源蔵・安藤美紀夫『日本の伝説 北海道の伝説』(角川書店、1977年)、知里真志保編訳『アイヌ民譚集』(岩波文庫、1981年)など複数の記録・研究に取り上げられている。水木しげる『妖怪大全』にもその姿と伝承が紹介される。

特徴

頭と尾は細く、俵のように太い胴を持ち、背には翼が生えている。目の縁と口の周りは赤く、鼻先は大木を裂くほど鋭く尖る。全身から放つ強烈な悪臭は触れた草木を枯らし、風下にいた人の体毛を抜け落ちさせ皮膚を腫れ上がらせ、至近距離では皮膚が焼け爛れて死に至ることすらあるという。冬場は力を失って弱るとされ、時には巫女に憑いて病の原因を語り、悪臭で疫病神を追い払う守り神ともなる。

ホヤウカムイのカバー画像