落ちたマブイを呼び戻す儀礼
マブイコメ
マブイグミ / マブヤコメ
転んだ拍子に、何かが体からこぼれ落ちた。子はぼんやりと宙を見つめ、二日たっても、三日たっても戻らない。ユタは道端の石を指さす――そこに、まだ魂が宿っている、と。石を抱かせれば、子はふっと我に返るだろう。魂をこめるから、マブイコメ。
概要
マブイコメは、沖縄で転倒や驚愕によって体から抜け落ちたとされる魂(マブイ)を、元の体に呼び戻す儀礼である。石垣島川平では、石につまずいて転んだ子供のマブイが落ちたとみて、母親がユタに相談し、転んだ場所の石にマブイをこめて持ち帰り、子供に抱かせて魂を戻したと伝えられる。マブイグミ、マブヤコメとも呼ばれ、沖縄各地で広く行われてきた。
出現
この儀礼は、子供や大人が石につまずいて転んだり、急に驚かされたりした後、ぼんやりとして生気を失い、それが二、三日たっても治らないときに行われる。心配した家族が沖縄の巫女ユタに相談し、「マブイウトシにあったのではないか」と診断されると、転んだ場所や驚いた場所へ出向き、儀礼の支度が始まる。
伝承
水木しげる『妖怪大全』は、石垣島川平でのマブイコメの一事例を伝える。同種の信仰は沖縄各地の民俗調査でも記録され、国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」には、伊是名村の「マブヤコメ」(『民間伝承』14巻1号、1950年)や久米島町の「マブイグミ」(『南島研究』33号、1992年)などの報告がある。
特徴
マブイは、転倒や急な驚きをきっかけに、いともたやすく体から抜け出てしまう。抜け出た魂は、その場にあった石などに宿るとされ、ユタの導きで簡単な供物とともにその石を持ち帰り、本人の体に抱かせると、じきに戻っていくという。子供は大人よりマブイを落としやすく、離れたまま日を経ると病がひどくなるとも伝えられる。