家に憑けば栄える、山姥の福
ヤマンバ憑き
ヤマンバノタキ
座敷を掃く箒の音がする。欲しかった物が、いつのまにか棚に置いてある。米櫃は、なぜか空にならない。誰も文句は言わなかった。ただ、白髪の後ろ姿を見てしまった夜——驚いて声をあげた、その一瞬だけは、取り返しがつかない。
概要
ヤマンバ憑きは、高知県土佐郡土佐山村(現・高知市)に伝わる話。思いがけない豊作や繁栄が続くことを「ヤマンバが憑く」といい、白髪の山姥が人知れず家に住み着き、福をもたらしているのだと考えられた。
出現
ある家では、続く豊作を不思議に思った主人が早めに帰宅し、家の中を外から覗いてみると、見知らぬ白髪の老婆が座敷を掃除していたという。この老婆こそが、家に福をもたらしていたヤマンバの正体であった。
伝承
家の繁栄を山姥の憑依として説明する伝承である。同じ土佐郡には、稗畑を持つ者が毎年豊作続きだったが、あるとき畑に火をつけたところ老婆姿のものが飛び出し、それから家運が衰えたという類話も伝わる。近くには、ヤマンバノタキと呼ばれる場所や、ヤマンバを祀る祠もある。
特徴
ヤマンバが憑いた家では、住人がある物を欲しいと思うと、それが自然と家に置いてあるようになり、米も不思議と切れることがなくなるという。その正体は白髪の老婆で、家人に姿を見咎められ驚いた声をあげられると、たちまち飛び去ってしまう。去られた家は、それから運が傾いたと伝わる。