鉦を鳴らして現れる大樹の精霊
化け銀杏の精
鉦の音が近づいてくる夜、庭の銀杏を切ろうとした鉈は、いつも同じところで止まる。黄色い小さな影が、木の分まで怒っているのかもしれない。
概要
墨染めの衣を着て鉦を叩いて現れる銀杏の木の精。庭に植えると不吉とされる銀杏の霊性が妖怪化したもの。
出現
銀杏の大木が茂る宅地や寺の庭先に現れるという。多くは伐採や剪定を試みた矢先に鉦の音や気配で存在を知らせ、無理に切ろうとした者の夢枕には女性の姿で立って思いとどまらせたとも、屋根を打ち砕いて祟ったともいう。手を出さぬ限りは何も起こらないとされる。
伝承
銀杏は神霊が宿る木と考えられ、切り倒そうとしても暴風雨に阻まれて果たせなかった、あるいは注連縄を張って神木として祀った神社が各地にあるという。この妖怪の姿は、俳人・与謝蕪村が丹後国宮津で描いたと伝わる『蕪村妖怪絵巻』の一図に由来する。
特徴
水気を吸収する力がすこぶる強く、床下深くまで根を張ると夏は湿気がこもって障子や襖の開閉を狂わせ、冬は逆に乾ききって家鳴りを起こすという。大木となって屋敷を覆い、落ち葉を厄介なほど降らせる一方、神霊が宿るがゆえに軽々しく伐採する者を退け、時に祟りをもって報いる。