人に憑いて武を演じさせる、山の憑き神

天狗憑き

天狗憑 / 天狗つき

昨日まで鍬しか握らなかった男が、今朝は見えぬ刀で宙を斬る。口をつけば、聞いたこともない山の作法。——そいつはもう、あんたの知る誰かじゃない。山が、山の言葉で喋っているのだ。

天狗憑きの立ち絵

危険度・希少度

C
戦闘力

驚かせ、転ばせる程度。命までは取らない。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

B
稀少性

各地に類話はあるが、遭うには条件がいる。

概要

天狗憑きは、人に天狗が乗り移るとされる憑依現象。憑かれた者は、習ったはずのない武術を演じたり、神仙の術理をよどみなく語ったりするという。近世に天狗と修験道が強く結びつき、山の禁忌を犯した者や心に隙のある者に取り憑くと信じられた。

出現

深山や修験の霊山に分け入り、天狗の領域を侵した者に起こるとされる。突然、人が変わったように荒々しく振る舞い、常人離れした身のこなしを見せる。多くは行者や修験者の祈祷によって落とされ、正気に戻った当人は、その間のことを何ひとつ覚えていないという。

伝承

近世には天狗と修験道の結び付きが強まり、名利を求める傲慢な山伏は死後に天狗になると考えられた。心の乱れた者を『狐つき』と嘲るのと同じように天狗を持ち出し、野干天狗・狐天狗・天狗地狗などと並べ称した。信州では神隠しを天狗にさらわれると言い、鯖を嫌う天狗に『鯖食った』と唱えて難を避けたという。

特徴

憑かれた者に、修めたはずのない武芸や、宙を舞うような身のこなしを与え、神仙の理を語らせる。当人に自覚はなく、我に返れば何も覚えていない。天狗は鯖の匂いを嫌うとされ、その名を唱えることが憑き物を遠ざける呪いになったと伝わる。

天狗憑きのカバー画像