雨の夜、山で布施を乞う僧
小雨坊
こさめぼう
雨脚が山を白く煙らせる夜、濡れた衣の坊主が道端に立っている。物乞いか、亡者か。ひと握りの粟を差し出せば、静かに頭を垂れて霧の奥へ消える――施しそびれた者だけが、後をつけられるという。
概要
小雨の降る夜に山中へ現れ、通りかかった者に布施や食べ物を乞う僧形の妖怪。鳥山石燕が『今昔百鬼拾遺』に描いたことで知られ、修験の霊山を舞台とする。青森の津軽地方には、粟をねだる別系統の伝承も伝わる。
出現
大峰山や葛城山といった修験道の霊山で、雨がそぼ降る夜に姿を見せる。濡れそぼった衣の僧が道の脇に立ち、行き交う修行者や旅人に近づいて、斎料――僧へ差し出す布施を静かに乞うてくる。
伝承
石燕の画図には「雨そぼふる夜、大みね・かつらぎの山中に徘徊して斎料をこふ」と添えられる。津軽では、雨の日に現れ粟をねだるのは行き倒れた巡礼の霊とされ、人々はあらかじめ粟を用意して備えたという。
特徴
人を襲ったり害したりすることはなく、ただ食や布施を求めてさまよう。断られても暴れはしないが、乞われるままに粟を与えれば難を逃れるとも語られ、施しを受けられぬ無縁仏の悲哀を宿す妖怪といえる。