おろし金の頭をもつ、言葉遊びの怪

山おろし

山颪

だいこん一本、机の上。頭はまるごとおろし金。「やまおやじ」「やまおろし」——舌の上をすべる音の遊びから、ぬっと立ちあがった一体である。害はなさそうだが、うっかり頭を撫でれば、あなたの手のほうが下ろされてしまうかもしれない。

山おろしの立ち絵

危険度・希少度

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

S
稀少性

ただ一体、一度きりの怪異として語られる。

概要

鳥山石燕の画集『百器徒然袋』に描かれた妖怪で、頭一面がおろし金のように無数の突起で覆われている。針めいた剛毛を負う豪猪(ヤマアラシ)になぞらえ、石燕が絵筆で生み出した一体で、その名は言葉の響きの遊びに由来するといわれる。

出現

野山や家々に現れたという言い伝えは残っておらず、その姿は石燕の描いた一枚の絵の中にだけある。傍らには大根が一本添えられ、いまにも頭のおろし金で下ろされそうに描かれている。山あいから吹き下ろす烈風「山颪」の名も、この妖怪に重ねられている。

伝承

豪猪、すなわちヤマアラシは、その針めいた剛毛から「山おやじ」とも呼ばれた。この「やまおやじ」と、大根などをする「おろし金」、さらに山を下る風「やまおろし」——似通った三つの響きが結びつき、頭におろし金を戴く妖怪の姿へと結晶したと解される。

特徴

頭の突起は、触れれば掌を裂きかねない鋭さをもつが、これを振るって人を襲ったという話は一切ない。豪猪と同じく、棘はもっぱら身を守るためのものである。祟るでも化かすでもなく、大根を傍らにただ滑稽に佇むところに、この妖怪の愛嬌がある。

山おろしのカバー画像