恋の怨みが数万匹の虫となった僧

幽霊紙魚

万を数える虫が、夜ごと書物と衣を食い荒らす。いかなる薬も通じず、家人はただ怯えるほかない。招かれた老僧が筆をとり、一枚の訓戒文をしたためる。読み上げる声が終わるとき、数万の紙魚はことりと動きを止めていた。

幽霊紙魚の立ち絵

危険度・希少度

C
戦闘力

驚かせ、転ばせる程度。命までは取らない。

B
敵対性

縄張りや禁忌に触れた者を積極的に襲う。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

概要

恋の行き違いから相手を殺し、自らも命を絶った栄山という僧の怨念が、数万匹の紙魚と化して恋仇の家に押し寄せた。どんな薬も効かず、高僧のしたためた訓戒文を読み聞かせると、虫はいっせいに息絶えたという。幽霊というより、怨念の凝った業とされる。

出現

ある日突然、恋敵とされた男の住まいに、衣類や書物を食む一センチほどの紙魚が数万匹となって湧き出し、家じゅうを埋め尽くして荒らし回る。いかなる薬を用いても駆除できず、家人は成す術を失う。それが尋常の虫でないと知れるのは、その異常な数と、何をしても止まらぬ執拗さゆえだった。

伝承

万物に霊が宿るとする古代の精霊信仰では、死者の霊は虫の霊とも通じ合うと考えられた。栄山という美貌の僧が、恋しい少年を奪った相手を殺め自らも果て、その霊が紙魚の姿を借りて祟った――男同士の色恋沙汰を発端とするこの怪異は、そうした霊の交わりの観念を背に語られてきた。

特徴

一匹は衣類や書物を食う一センチばかりの虫にすぎないが、怨念に駆られると数万の群れをなして家を覆い尽くす。人がどんな薬を用いても、燻しても、その勢いは衰えない。ただ一つ効いたのが、高僧のしたためた虫への訓戒文だった。文を読み聞かせると、あれほどの群れがいっせいに息絶えたという。

幽霊紙魚のカバー画像