死者の集う、北の霊場
恐山の霊
風の絶えた山湖のほとり、名を呼べば、逝った者がイタコの口を借りて応える。
概要
青森県下北半島の恐山に集うとされる死者の魂。この地では亡くなった者の霊は皆この山へ帰ると信じられ、宇曽利山湖のほとりに菩提寺が開かれた。硫黄の匂い立つ荒涼とした風景は、そのままあの世の入り口と見なされてきた。
出現
大祭や秋詣りの時期、境内には巫女イタコが並び、口寄せを求める人々が列をなす。その口を借りて故人が語り出し、湯治場の窓辺にはあの世から来た死者の面影がよぎるともいう。賽の河原では、子を亡くした親が石を積んで名を呼ぶ。
伝承
恐山は天台宗の慈覚大師円仁が九世紀に開いたと伝わる。南部地方では人の死後、その魂はここへ行くとされ、明治・大正のころには「参れば死者に会える」と広く信じられた。河原で石を積み声をかければ、亡き者の応えが聞こえるという。
特徴
姿を持って現れるより、生者の呼びかけに応じて気配や声として立ち返るのが、この霊たちのありようである。イタコという媒を通し、あるいは荒れ地を渡る風や湖面の光にまぎれて、残された者へ言葉を届ける。害をなすのではなく、慕われて呼ばれ、会いに来る霊である。