山から海へ腕を伸ばす、手の長い巨人の老婆
手長婆
山の上から、ぬっと。腕は谷を越え、里を越え、波打ち際の貝までも掴む。届かぬ場所など、この婆にはない。
概要
異様に長い腕を持つ、老婆の姿をした巨人。山の頂に棲み、腹が減ると遠くの海まで手を伸ばして貝を採り、食べたと語られる。各地に似た話があり、常人離れした身の丈と腕で獲物をたぐり寄せ、時に人をも掴むとされる、手の長さそのものが力の妖怪である。
出現
棲みかは人里離れた山の頂や、海を望む崖の洞穴とされる。青森県三戸郡田子町の北にそびえる貝守ヶ岳では、山頂に座したまま、はるか八戸の浜まで腕を伸ばして貝をあさったという。海辺で遊ぶ子らは、どこからともなく伸びてくる長い手に気をつけよと戒められた。
伝承
秋田や山形などに伝わる、手足の異様に長い巨人「手長足長」と同じ系譜に連なる存在で、長い手を持つ老婆として各地で語られてきた。青森では山に棲む巨人とされ、下総の地では白髪で恐ろしい形相の老婆が、水辺で遊ぶ子をさらうとも伝わる。
特徴
座ったまま数里先の海に手が届き、その長い腕だけで漁をこなし、時に人をもたぐり寄せる。膂力は強大だが動きは鈍く、もっぱら腕の長さを頼りに獲物を得る。棲む山を離れず、手の届く範囲を狩場とするため、その勢力圏は座す一点を中心に大きく広がっている。