九千年を生きるという不死の仙人、八百比丘尼に長命くらべを挑む
東方朔
「斧を磨いて針にするのだ」と老人は笑う。八百年を生きた尼が目を見張ると、彼はこともなげに付け加えた——「わしは、その十倍と少し生きておる」。
概要
中国前漢の武帝に仕えた実在の文人が、後世に長寿の仙人として神格化された姿。西王母の桃を盗んで長命を得た「三千甲子東方朔」として知られる。日本では出雲に現れ、人魚の肉で八百年を生きたという八百比丘尼を相手に、自らは九千年を生きると語ったと伝わる。
出現
出雲の地に、ひとりの老人として立つ。長命で名高い八百比丘尼のもとを訪ね、世間話めかして相手の齢をそれとなく探る。やがて明かされるその正体は、九千年の時を重ねてきたという仙人である。
伝承
東方朔はもと中国前漢の武帝に仕えた実在の人物で、のちの書物で才知を語り継がれるうち長寿の仙人として神格化され、「三千甲子東方朔」と称された。島根県には、八百比丘尼に長命くらべを持ちかけ、相手が八百年を生きていると聞き出したうえで、自らは九千年を生きると打ち明けた逸話が伝わる。
特徴
人と変わらぬ老人の姿をとりながら、途方もない齢を重ねた仙人。牙も爪も持たず、その本領は害をなす力ではなく、時の長さそのものにある。相手の年齢を巧みに引き出す弁舌に長け、九千年という自らの寿命を静かに誇る。長命の女・八百比丘尼と並べて語られる。