古松に宿り、童子に化けて寺を災いから守る木の精

松の精霊

硯を借りた二人の童子は、さらりと一首を書きつけて言った。「これで、この寺に災いは来ますまい」。顔を上げたとき、門前にはただ、二本の老松が枝を交わしているばかりだった。

松の精霊の立ち絵

危険度・希少度

D
戦闘力

直接人を害する力は伝えられていない。

D
敵対性

人への害意はなく、時に福さえもたらす。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

概要

年ふりた松の木に宿るという精。愛知・長興寺の門前に立つ一対の老松「二龍松」は、二人の童子に化けて住職の前に現れ、漢詩を書き残して寺を災いから守ったと伝わる。人に害をなさず、むしろ助ける穏やかな樹木の霊として、各地に類話が語られる。

出現

由緒ある寺の門前などに立つ、年経た松の大木のかたわらで出会う。童子や少年の姿をとって現れ、墨と紙を乞うては、漢詩めいた文字を書き付けて再び松へと戻っていく。愛知・長興寺の二龍松にまつわる話がとりわけ名高い。

伝承

江戸前期の怪談評判本『古今百物語評判』(1686年)に「参州加茂郡長興寺門前の松、童子にばけたる事」として載る。門前の一対の老松「二龍松」が二人の童子となって住職に硯と紙を求め、一首を走り書きして「これでこの寺に災いは降りかかるまい」と告げ、松へ戻ったという。三河国加茂郡、現在の愛知県豊田市の長興寺に伝わる。

特徴

樹齢を重ねた松に宿り、童子や少年の姿をとって人前に現れる。牙も爪も持たず、人を脅かすことをしない。むしろ書を残して寺を災いから守り、加護を告げるなど、人の営みを助ける穏やかな精である。老松が伐られようとするとき、人の姿で立ち現れる類話も各地に残る。

松の精霊のカバー画像