少年に相撲を挑む、目に見えぬ川の群れ
正吉河童
二匹を投げた。水面が揺れ、また十匹が這い上がってくる。勝っているのはどちらなのか、もう本人にもわからない。
概要
相撲取りを父にもつ怪力の少年・正吉に、川で相撲を挑んだ河童の群れ。二匹を投げ倒せば十数匹が水から湧き、勝負は果てしなく続く。豊後国日田郡に伝わる、一人の少年を軸に語られる河童憑きの顛末である。
出現
夏、日田郡竹田村の川で水浴びをしていた正吉が、水中で何者かにいたずらされたのが発端。その夜、川辺に立つと闇から数人の子供が現れ、相撲を取ろうと誘う。応じた正吉が組み合ううち、傍目には誰もいない宙へ向かって独り暴れる異様な姿となった。
伝承
寛永期の『川太郎伝』や地誌『日田郡誌』が伝える。正吉が二匹を投げると河童は十数匹に増え、少年はついに正気を失った。父が郷義弘の銘入りの脇差を傍らに置くと体が震え、脇差をどけると再び暴れ出す。最後は修験者の祈祷によって祟りが去ったという。
特徴
群れで人を取り囲み、力自慢の者をあえて相撲に誘い込む。倒されても数で押し返し、いつしか相手に憑いて正気を奪う。名工の銘を刻む刃物を嫌って怯み、正面からの腕力よりも祈祷や呪具に弱い。