渕に潜む河童の必殺の手
河童の尻子玉取り
足首をつかむ細い手は、もう放さない。深みへ引かれ、背へ回られたが最後――抜かれた玉とともに、力も命も渕へ沈む。水面に残るのは、意味もなく笑う声だけ。
概要
河童が水中で人や馬の肛門に手を入れ、尻子玉を抜き取るという行為。抜かれた者は腑抜けになって命を落とすとされ、水辺の溺死を河童の所業として説明する、河童伝承の中心をなすふるまいである。
出現
川や沼、淵で泳ぐ人や、水を飲みに来た牛馬が狙われる。河童は水面下から音もなく近づいて足を取り、深みへ引きずり込むと、水中で背後へ回って尻をねらう。淵の主が最も力を振るえる、水の中でのできごとである。
伝承
尻子玉は肛門の奥にあると想像された架空の臓器で、これを失うと人は腑抜けて死ぬとされた。水死体は括約筋がゆるんで肛門が開くため、玉を抜かれた痕と見なされ、河童の仕業とする語りが生まれたと考えられている。子どもを水辺の危険から遠ざける戒めとしても伝えられた。
特徴
奪われる尻子玉を、河童は何より好むという。伸縮する腕を水中から伸ばし、人はもとより牛馬の尻もねらう。抜かれた者は全身の力が抜け、ときにゲラゲラと笑い出して正気を失い、奪った玉は河の主へ献じられるとも、自ら食らうとも語られる。