名器の魂が宿る座頭姿の付喪神
琵琶牧々
玄象を盗んだ鬼でさえ、その音には抗えなかった。まして、旅の夜にふと耳を澄ませてしまった者になら。
概要
名器と謳われた琵琶が化けた付喪神。頭が琵琶、体は盲目の座頭(琵琶法師)の姿をとり、杖をつきながら日本中を行脚して歩くという。
出現
街道や宿場、寺社の門前などを、撥と杖を手にした琵琶法師の影がゆく。近づいて見れば、頭は人の顔ではなく一面の琵琶——それが牧々である。
伝承
鳥山石燕『百器徒然袋』に描かれる。名は名器「牧馬(ぼくば)」の転という。玄象・牧馬は平安の琵琶の名器で、『禁秘抄』には、玄象が内裏焼失の折に自ら飛び出し、その音色に魅せられた鬼が盗んで朱雀門から吊り下げたと伝わる。『徒然草』七十段の記述も踏まえて生まれた。
特徴
目を閉じ、杖を頼りに歩む。手にした撥で往時の妙音を奏で、その調べは聴く者を魅了する。名だたる楽器の魂が宿るゆえ人への害意はなく、ただ響きを求めて諸国をさすらう。