村を渡り歩く疫病の悪神
疫病神
やくびょうがみ / 疫神 / 厄神 / 行疫神 / 厄病神
戸を叩く音もなく、そいつは敷居をまたぐ。もてなせば去り、拒めば居座る、招かれざる客。
概要
疫病神は、家々に入り込んで人を病気にし、疫病をもたらすとされる悪神。青ざめた老人や老婆の姿で、一人、あるいは五人一組で町や村をさまようとされた。侵入を防ぐ道切りや、丁重に送り出す民俗行事が各地に伝わる。
出現
疫病が広がる季節、村へ通じる道を伝ってやって来るとされる。人けの絶えた辻や家の戸口に忍び寄り、招かれずとも屋内へ入り込む。秋田では二月九日を疫病神が村を訪れる日とし、戸外に網目の多いザルを下げて備えた。誰にも見とがめられぬまま、床に病人を増やしていく。
伝承
平安時代以後、中国の疫鬼の観念が広まり、疫病は鬼神のもたらすものと考えられた。五人一組で行動する姿は、中国の疫鬼・一目五先生に由来するという。文政三年(1820年)の江戸では、捕らえられた疫病神が「決して家には入らない」との証文を残して去ったという話も伝わる。
特徴
ひとたび家に入り込めば、住む者を次々と病の床に就かせる。一人で忍び入ることもあれば、五人連れ立って町から町へ渡り歩くこともある。小豆粥を炊く家や、大草鞋を吊るした村境は嫌って避け、丁重にもてなして送り出せば、恨みを残さず素直に去っていくという。