顔なき白い夜道の坊主
白坊主
しろぼうず
月のない晩、畦道の先が白い。近づけば、それは着物のようでもあり、大きな提灯のようでもある。坊さんですか、と声をかけても、返事はない。顔のあるべきところに、ただのっぺりと闇が凪いでいる。狐ではない、と古老は言った。では、いったい何なのか——。
概要
夜道に現れるボーッとした白い妖怪。狐が化けたものではないとされ、正体は不明。
出現
大阪・和泉地方の夜道に、ふいと現れる。全身が真っ白で、絣の着物を着た坊主の形とも、風船のようにまるく膨れた影ともいう。目も鼻も口もさだかでなく、手足があるのかどうかさえはっきりしない。ただぼんやりと道をふさぐように立ち、行き合わせた人をぎょっとさせる。
伝承
土地の古老は、これを狐の仕業とは見なさなかった。和泉の狐は藍染めの縞の着物をまとって化けるので、白装束のこれは別物だというのである。背が伸びる見越入道に似るともいうが、目の前で伸びていく様子はなく、顔のないところから、のっぺらぼうの一種にも数えられてきた。
特徴
人を脅かすばかりで、噛みつくでも祟るでもなく、危害を加えたという話は伝わらない。近づいても襲っては来ず、気づけばいつの間にか消えている。正体の見当がつかぬことこそがこの妖怪の身上で、白い僧形の怪しみは和泉のほか、静岡・和歌山・三重・熊本など各地の夜道にも語り継がれてきた。