按摩で眠らせ石で傷つける化生
石妖
その指はやわらかく、まどろみは甘い。ただ一つ——目覚めたとき背に走る、石を擦りつけたような幾筋もの傷を除いては。
概要
美しい女の姿をとって石工に近づき、按摩を施して眠らせ、その背に石で引っ掻いたような傷を残す妖怪。撃たれると人の姿を捨てて砕けた石に返ることから、正体は硬い石の気が化けたものとされる。伊豆の山中に伝わる。
出現
伊豆の山中の石切り場で、石工たちが昼休みに一息ついていると、どこからともなく美しい女が現れる。『毎日のお仕事でお疲れでしょう、按摩をして差し上げましょう』と声をかけて揉みほぐしはじめると、その心地よさに石工は一人また一人とまどろみへ落ちていく。
伝承
『中陵漫録』巻十三(佐藤成裕著)に載る。豆洲の石切り場で女が石工らを按摩で眠らせるさなか、一人が怪しんで抜け出し、同じく女を疑う猟師と出会う。連れ立って戻り猟師が女を撃つと、その姿は消えて砕けた石が残った。眠っていた石工の背には石で掻いたような傷があったという。
特徴
美女に化けて石工へ近づき、巧みな按摩で油断させて眠らせる。眠り込んだ者の背を硬い石でざらりと引っ掻き、病を招きかねない傷を負わせる。鉄砲に撃たれれば人の姿を捨てて砕けた石に返るが、それで滅びることはなく、同じ石切り場に幾度も現れたと伝わる。