美女に化けて男を誘い込む、古蜘蛛の化身
絡新婦
女郎蜘蛛 / じょろうぐも
「どうか、うちの娘と」——差し出された白い手に、細い糸が一筋光る。館の梁の高みでは、幾百の目がじっと客を見下ろしている。
概要
大きな蜘蛛が美女に化けたもの。男を館に誘惑して結婚を迫る。正体は古い蜘蛛の巣に潜む。
出現
夏の昼下がり、縁側でうたた寝していると、見知らぬ女がふいに声をかけてくる。娘があなたに懸想していると告げ、たっての願いだと立派な館へ誘うのだ。招かれた先には十六、七ばかりの美しい娘がいて、熱心に夫婦になってくれと迫る。断って逃げ出せば館はかき消え、気づけば元の縁側——軒先には小さな蜘蛛と、びっしり張られた巣だけが残っている。
伝承
怪談集『太平百物語』には、作州高田(現在の岡山県真庭市)の孫六という男の話が記される。女に誘われ求婚を迫られたが、我に返ると自宅の軒に蜘蛛の巣が張り、二日前に追い払った蜘蛛の仕業と悟ったという筋である。類話は各地にあり、伊豆・浄蓮の滝で木こりに糸を巻きつける話や、仙台・賢淵の淵の主の伝説が知られる。「女郎蜘蛛」が本来の呼び名で、「絡新婦」は漢名を当てた表記である。
特徴
昼は年若く美しい女に化けて男の前に現れ、言葉巧みに己の棲み処へ誘い込む。夜になれば本性の大蜘蛛へと戻り、糸を吐いて獲物を絡め捕らえ、精を吸い尽くすという。水辺の滝壺や、打ち捨てられた古い蜘蛛の巣を根城とし、長い歳月を経た蜘蛛ほど強く人に化けると伝わる。鳥山石燕は、火を吹く子蜘蛛を従える姿にこの妖怪を描いた。