道をふさぐ衝立の化け狸

衝立狸

ついたてだぬき

「壁ではない。お前が退いただけだ」——腹に力を込めて一歩、板は夜気に溶けた。

衝立狸の立ち絵

危険度・希少度

C
戦闘力

驚かせ、転ばせる程度。命までは取らない。

C
敵対性

脅かし惑わせはするが、深追いはしない。

A
稀少性

限られた土地でだけ、まれに語られる。

概要

徳島県脇町の夜道で、道いっぱいの大きな衝立となって立ちはだかる化け狸。多くの通行人はこれに驚いて引き返したが、丹田に力を込めて構わず突き進めば、すり抜けて先へ行けたと語られる。人の足を止める点で塗壁と同類の怪異とされる。

出現

脇町から新町へ抜ける高須という寂しい道筋に、夜更けの人の前へ現れる。突然、行く手が板壁のような衝立でふさがれ、暗がりに一歩も進めなくなる。恐れて引き返す者が相次ぎ、日が暮れてこの道を通る人はほとんどいなくなったという。

伝承

笠井新也『阿波の狸の話』(1927年)などが伝える阿波の化け狸譚。恐れた土地の人々が光明真言を四万八千遍唱え、緑泥片岩の石碑を建てて封じたとされる。石碑は昭和初期まで現存したが、のちに失われたと伝わる。

特徴

身を巨大な衝立に変えて道をふさぐが、その実体は薄く、気迫を持って踏み込む者は難なく通り抜けてしまう。臆した者だけを足止めする、脅しに長けた狸である。刃向かう者や封じの祈りには弱く、真言と石碑によって鳴りを潜めたと語り継がれる。

衝立狸のカバー画像