廃寺で鐘を撞く僧形の怨念
野寺坊
布施は絶え、参る者もない。それでも坊主は鐘を撞く——誰か一人でも、振り返ってくれはせぬかと。
概要
荒れ果てた無住の寺に現れる、破れた袈裟をまとった僧形の妖怪。夕暮れの人けのない堂で、誰にともなく寂しく鐘を鳴らすとされる。廃寺となった寺に取り残された、行き場のない僧の姿ともいわれる。
出現
参る者もない山里の荒れ寺で、日が傾く頃に鐘の音が響きはじめる。訪ねても本堂に人影はなく、鐘楼のかたわらに一人の坊主が立ち尽くしているという。
伝承
鳥山石燕の画集には僧形が鐘のそばに立つ姿だけが描かれ、詞書はない。後の世に、村人の布施が絶えて寺を追われた住職の執念が妖と化したもの、との解釈が広まった。
特徴
生前と変わらず、日暮れどきになると鐘楼にすがって鐘を撞き続ける。人を襲うことはなく、ただ弔いの絶えた寺の寂寥を、鐘の音にのせて響かせるばかりだとされる。