星となって地を走る怪火
野火
ノビ
傘ほどの火がふいに弾け、数十の星が野を駆けていく。草履に唾をつけて招いてごらん。その光は、ちゃんと頭の上まで、踊りに来てくれるから。
概要
土佐国長岡郡(現・高知県南国市)に伝わる怪火。傘ほどの大きさの火が、砕けて数十の星のように分かれる不思議な現象として語られる。人を焼くこともなく、夜の野を戯れるように駆けるとされる。
出現
旧国府村あたりの夜道、ふいに宙へ浮かんだ火が音もなく弾ける。散った光は地面から四、五尺ほどの低さを保ったまま、数百間もの距離をひと息に走り抜けていく。行く手の闇を、無数の火花が横切っていくのである。
伝承
土佐国長岡郡国府村(現・南国市後免町)に語り継がれた光の怪異で、村の地誌『国府村誌』に記録されている。低く地を這って走る火として土地の人に知られ、後年その記録が世に紹介された。
特徴
本体は傘ほどの一つの火でありながら、砕ければ数十もの細かな光に分かれる、それが野火の正体である。草履に唾をつけて招くと、その光は応じて招いた者の頭上に集まり、煌々と輝きながら舞うという、どこか人懐こい火である。