船を沈める外海の巨大怪魚

あやかし

イクチ / いくじ / ゐくち

船頭は櫂を置き、笠で油を受けては海へ返す。二日、三日。頭がどこにあるのか、尾がどこで終わるのか、誰も見た者はいない。ただ長い夜のあいだ、船の下を何かが越えていく。

あやかしの立ち絵

危険度・希少度

B
戦闘力
D
敵対性
A
稀少性

概要

あやかしは、外海に現れる巨大な鰻のような海の妖怪で、イクチとも呼ばれる。太さはさほどでもないが体長は数千メートルにも及び、船を乗り越えて通るのに二、三日を要したという。その間、船中へおびただしい油をこぼし、汲み流さねば船が沈むと恐れられた怪魚である。

出現

九州・四国・関東地方の外海、とりわけ常陸(現・茨城県)の沖で船が航行する際に現れる。夜の海上で長い体をうねらせて船をまたぎ、越えていくまでの長い時間、船人は船内に溜まる油を笠で受けとめて海へ流し続けねばならなかった。八丈島あたりの海辺には小さいものがいて、輪になって遊ぶという。

伝承

津村淙庵の随筆『譚海』に常陸沖の怪魚として記され、根岸鎮衛『耳袋(耳嚢)』では「いくじ」の名で西海・南海に現れると語られる。鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』の「あやかし」の図はこのイクチを描いたものと考察され、後世この海の巨大怪異の総称にもなった。

特徴

体長は数百丈にも及ぶ細長い体を持ち、太さは目立たない。夜の外海に現れ、船を乗り越える間に体表から大量の粘着質の油を分泌して船中へこぼす。人を直接襲うことはなく、油を汲み流さねば船が沈むという受動的な脅威として振る舞う。八丈島近海の小型のものは海上で輪になって遊ぶという。